直利庵

わんこ蕎麦

‘ どーんどん ’ ‘ じゃーんじゃん ’ ‘ あいよっ ’ やわらかく響く軽快な掛け声とともにお椀に投げ込まれる蕎麦。 盛岡在住の友人に案内いただき、訪れたのは明治17年創業の老舗 直利庵さん。 岩手県南部に伝わる、蕎麦振る舞いという習慣が原型といわれる ‘ わんこそば ’ 。 お給仕さんの掛け声も軽やかに、お椀に次々とお蕎麦が放り込まれるのが盛岡流。元はお殿様をおもてなしするためのものだったため、掛け声をかけないのが花巻流なんだとか。 ズラリと並ぶ薬味に目移りしながらも、いったいどのタイミングでこの薬味を味わえばよいのか戸惑います。 この、テンポよく投げ込まれる蕎麦を夢中ですする蕎麦食いレースは、何杯食べれるかを競うだけではなく、お給仕さんとの掛け合いも楽しみのうち。 「もうお腹いっぱい」と、ストップをかける友人に、「あら？そちらはもう召し上がりませんか？」と、少し前に空けたお椀を指し示すお給仕さん。 「え？」と、視線を移した隙をつき、お給仕さんは友人が手に持つお椀にお蕎麦を滑り込ませる。 「あっ！しまった！」。お給仕さんに一本とられた友人は、笑いながらもう一口。 愉快な体験でした。